TERRA
偽伝承〜語られざる虚言〜伝承之弐

次の日、私はまた昨日の場所に赴いた。
約束通り、例の吟遊詩人は、同じ場所で待っていた。
彼女は広場の椅子に座る様に促すと、おもむろに続きを語り出した。



バルスとリース、2人は奇妙な因縁で(ただ目的地が同じ方向だっただけと言う話もある)旅をする事になった。
旅は順調だった。リースが斬り、バルスがふっとばす。
2人がグルメだった事が災いし、彼らが通った後ではモンスターと言うモンスターが消え去った。
(リースは肉だけしか食べなかったが、バルスは骨までぼりぼりとさも美味しそうに平らげてしまった)
そしてそろそろリースの目的地にさしかかろうというところまで辿り着いた。

それは山道に入って暫く経った頃の事だった。
バルスがうっかり財布を落としてしまった。
幸いすぐに気付いたので、拾おうとした。
その時、
「もらった〜!!」
銀髪の少年が何処からともなく現われ、バルスの財布を拾い、
神速とも思える速度で、そのまま何処かへと消え去った。
バルスは暫く唖然としていたが、事を理解したのか叫んだ。
「うはっ!なんでっ!?」
リースの方はバルスよりは少しだけ冷静だったらしい。
チャリ〜ン
無言で小銭を道端に落とした。
リースとしても、これで来るだろうとは思っていなかった。
落ち付いていたのは、バルスと比べて少しだけ…だったのだから。
しかし…
「その小銭、もらった〜!!」
再び銀髪の少年は、神速でリースが落とした小銭を拾いに来た。
「ちょっと待った〜!!」
リースはそう叫ぶと、鞘から抜かずに、刀を少年へ振り下ろした。

少年が目を覚ますと、リースに刀をつきつけられ、
後ろからバルスの爆裂火球が狙っていると言う状況だった。
結構怖い状況である。
ちなみに取られたサイフは既に取り返してある。
「な、なんだよ…」
「なんだよじゃないでしょう?人の財布を盗っておいて。」
リースは刀をチャキッと鳴らして、構えなおした。
「あ、えっと、サイフは…」
「もう返してもらった…」
爆裂火球を片手にバルス。その火球は見る見るうちに大きくなっていく。
「あ、えっと、すまん。出来心だったんだ。」
「ぶつぶつぶつ」
バルスは相変わらず怪しげな呪文を唱えている。
それは、いつでも火球を飛ばせるぞ…とも取れた。
「まあ、いいでしょう。バルスも財布さえ返せば許すと言ってる事ですし。」
バルスもコクコクとうなずいている。…よく理解できたな、リース。
「そ、そうなのか…?まあ、話がわかるやつでよかったぜ。」
「反省してますか?」
リースはまた刀をチャキッとやった。…どうもこの音が気に入ったらしい。
「してる…してるって。そうだ、俺も一緒につれていってくれよ、結構役に立つと思うぜ。」
「…何か企んでませんか?」
「企んでないって。」
「うはっ。私は、バルス…」
「バルスがそう言うなら…私はリース、リース=サテライトです。」
だからどうやって理解してるよ、リース。
「おう、俺はヒョウ、ヒョウ・アイスフィールドだ。」
こうして、後に伝説として語られる、3人の旅が始まった。



丁度そこまで聞いたところで、正午の鐘が鳴った。
「あ、いけない、午後から師匠に呼ばれてたんだった。」
私は用事を思い出し、また明日この場所で会う事を約束し、師匠の元へ急いだ。

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